相続した不動産を売却した場合の税金と節税対策について
親の家を売却するにもまずは相続から
親が住んでいた家の土地と家屋を相続したとしても、相続時には基礎控除額が適用されて相続税の支払いは必要なかったということはよくあります。親が長年住んできていて、それほど大きくない家なら、基礎控除額の範囲内に不動産価値が納まってしまうことがほとんどだからです。
法定相続人である子どもの数も減っていますので、場合によっては法定相続人は一人だけということも珍しくありませんが、仮に兄弟姉妹がいる場合には法定相続人の間で遺産分割協議を行い、誰もが納得するよう、親からの遺産を相続しなければなりません。
そのため、親の住んでいた家と土地は、相続後に売却すると決めているとしても、まずは相続手続きから行います。遺産分割協議書を作成し、不動産の名義を書き換える作業が必要で、法定相続人が数人いるならひとまず共有名義にするという手で、相続税が発生する可能性がある場合、相続税の支払いを回避することができるかもしれません。
いずれにしてもこの先、相続した不動産を売却するには相続手続きから入らなければならないため、相続時の税金を安くする、あるいはまったくかからないようにするためにどうすべきかを考えることも、節税対策として重要です。
相続してから不動産を売却した場合に発生する税金とは
遺産分割協議が終わって不動産名義を書き換えたら、次は相続した不動産を売却する段階へと移ります。相続した不動産を売却するにあたって発生する税金には、印紙税を筆頭に、不動産を譲渡したことによって所得を得たとみなされるため、所得税に住民税、復興特別所得税に関係してきます。印紙税は国税で、不動産売買をする際に取り交わす不動産売買契約書に貼るために、収入印紙を購入することで納税します。
収入印紙の額は、不動産にいくらの契約金額が付いたかによって変わり、最低印紙税の1万円に該当する契約金額は500万円超1000万円以下、最高60万円の印紙税に該当するのは契約金額50億円超です。通常、親が住んでいた土地と家屋を相続後に売却する場合は、1000万円超5000万円以下の印紙税2万円か、多くても5000万円超1億円以下の印紙税6万円といったところに当てはまるでしょう。
不動産を売却して得たお金は譲渡所得という所得に分類され、所得税と住民税、復興特別所得税が課税されてきますが、これらの税金は不動産を売却した際にあくまでも売却益が発生した場合に限られる点は知っておくべきでしょう。売却したときにお金を手にしたものの、そもそも売却するための不動産を取得するためにかかった費用のほうが多ければ、売却益は発生せず、当然これらの税金もかかってこないからです。
不動産を売却した場合に税金が発生するかどうかの計算は
不動産を売却して売却益が発生した場合、所得税に住民税、さらに復興特別所得税がかかりますが、これらの税金は株式や外貨といった投資で得た利益に対する課税と基本的に同じと考えると、投資をしている人ならわかりやすいでしょう。不動産を取得した際の金額とそのときにかかった経費から、売却代金を差し引いて出た売却益が課税対象額となりますが、売却に際して必要となった費用が差し引けます。
売却益から費用を差し引いた残りが、不動産を売却して得た譲渡所得ということになり、この金額をもとに15%の所得税と5%の住民税、0.315%の復興特別所得税が計算される仕組みです。相続した不動産に関して異なる点は、自分自身が購入したわけではないため、相続してから何年間保有したかによって、売却した際にかかってくる税金の税率が変わってくるのが特徴です。保有期間が5年超の場合、長期譲渡所得に該当し、税率は先に挙げた数字と同じになりますが、5年以下の保有期間で売却した場合、短期譲渡所得となり、所得税は30%、住民税は9%となります。
まとめ
保有期間によって税金の率が大幅に変わってくることから、5年は持っておいたほうがお得と感じるかもしれませんが、果たしてどちらがお得なのかをあらゆる面から考えることが大切です。それというのも、5年を超えて保有するということは、その間土地と家屋に対して固定資産税がかかるからです。
5年を超えて保有することで高く売れるという見込みがあるなら、固定資産税を払ってでも売却益の課税率が低いほうが、節税対策が高いという場合もあるでしょう。しかし、売却益はほんの少しというのであれば、5年以下で高い税率であっても、できるだけ固定資産税を払わずに済むように、早く売却したほうが得ということになります。
このように、相続した不動産を売却するにあたっては売却益に対する税金の利率だけでなく、不動産を所有することによって毎年発生する固定資産税を含めて、いつ売るのが最も節税効果が高いかという観点から節税対策を考えることが、非常に重要だと言えるでしょう。